研究

報酬や罰の"不在"の学習

主要責任者: ミヒャエル・シュライアー、サドニマン・ラーマン

  報酬を見つけることと罰を避けることは、しばしば生物の行動を決める強力なモチベーションとなります。得られる報酬を最大化し、罰を最小化するためには、報酬や罰の発生を予期させる刺激を学習することが有効的です。これまでの何十年にもわたる研究によって、脳がどうやってそのような連合学習を行なっているのかは、少しずつ明らかになってきました。ところが、生物が報酬または罰の「不在」と関連づけられる刺激も学習できるという事実は実験心理学分野ではよく知られていることなのですが、それ以外の研究分野では軽視されがちです。私たちはこの現象についてショウジョウバエの幼虫を用いて研究しています。最近の私たちの研究成果で、同一の報酬系ドーパミンニューロンが報酬の存在と不在、両方のタイプの学習を成立させられることがわかりました。そこで今は、罰系のドーパミンニューロンに関して、光遺伝学や行動トラッキング、コネクトーム解析などを組み合わせて調べています。

記憶の安定性

主要責任者: ミヒャエル・シュライアー、福島彩夏

  記憶学習は生活の上で必要不可欠な能力です。では記憶の持続時間はどのようなメカニズムで決定されるのでしょうか。試験勉強に励む学生からアルツハイマーなどの認知症に悩まされる高齢者まで、これは重要な意味を持つ疑問でしょう。

  私たちは、糖や人工甘味料などの物質が記憶の持続性に与える影響を、ショウジョウバエの幼虫を用いて調べています(秋山財団助成研究)。  

高精細な行動解析

主要責任者: ミヒャエル・シュライアー

  神経回路が行動をコントロールする仕組みを調べるためには、行動を高精細に解析する必要があります。そこで、IT系の科学者や学生の協力のもと、ショウジョウバエ幼虫用のビデオトラッキングと行動解析のソフトウェアを開発しました。このソフトウェアをさらに改良し、運動や目標指向行動を理解するために活用したいと考えています

アミノ酸学習

主要責任者: 利嶋奈緒子

  アミノ酸はタンパク質合成に必要とされると共に神経伝達物質としても利用されるなど、動物にとっては非常に重要な栄養素です。しかし、動物がアミノ酸の豊富な餌を探すためにどうやって過去の経験と記憶を活用しているかは、よくわかっていません。成長のために常に摂食行動を行なっているショウジョウバエの幼虫は、この疑問に答えるのに適した研究対象です。

  私たちは、アミノ酸刺激が幼虫に嗜好と嫌悪の平行記憶を形成させることを発見しました。現在は、この平行記憶をもたらす神経メカニズムを解明しようとしています。

意思決定

主要責任者: ミヒャエル・シュライアー、マイア・ワン

  過去の経験、現在の欲求、そして与えられた行動の選択肢は意思決定にどう影響を及ぼすのでしょうか?例えば幼虫が、「実在するそこそこのエサ」と、「より良いエサを想起させる匂い刺激」を反対方向から与えられた場合、どちらを選ぶのでしょう。私たちが開発したトラッキングソフトウェアと、ショウジョウバエの遺伝学的ツールを使って、そのような意思決定のメカニズムを研究しています。